有言実行の男、AK-69がコロナ禍で敢行した 名古屋城での超配信ライブ

2020.10.02秦野邦彦

1996年、地元名古屋を拠点に活動開始。ラップと歌の二刀流という独自のスタイルでアンダーグラウンドからマイク1本で這い上がり、日本のヒップホップ界の頂点に上り詰めたカリスマ、“AK-69(エーケー・シックスティーナイン)”。ヒップホップにはあまり馴染みがないという方も、スポーツファンならきっと一度は彼の歌声を耳にしたことがあるはずだ。

有言実行で突き進むAK-69の楽曲はアスリートからの信頼も絶大で、『Divine Wind -KAMIKAZE-』『IRON HORSE -No Mark-』『Flying B』といった試合前の闘志を揺さぶるアンセムの数々はメジャーに移籍した筒香嘉智選手をはじめNPBプロ野球選手の入場曲使用率No.1。日本人初のボクシング4階級王者・井岡一翔選手も入場曲に「ロッカールーム -Go Hard or Go Home-」を使用し、リーチ・マイケル選手、稲垣啓太選手を擁するラグビー日本代表ではトレーニング時にAK-69の曲だけで構成されたプレイリストを聴きながら自身を鼓舞している。

AK-69の挑戦は国内にとどまらず、2012年、武者修行のために訪れたニューヨークではNo.1 HIP HOPラジオ局と名高いHOT97のイベントに日本人として初めて出演。2016年にはカニエ・ウエストらを擁するアメリカの名門レーベル Def Jamレコーディングズと契約を果たすまでに至った。

今年8月には自身の本質である「LIVE」と人生を表す「live」をコンセプトにした最新アルバム『LIVE:live』をリリース。これまで第31回日本ゴールドディスク大賞「BEST 5 NEW ARTIST」、MTV VMAJ 「BEST HIP HOP ARTIST」、「Billboard JAPAN Independent of the Year 2011」、オリコン総合DVDチャート1位など15タイトル以上を受賞し、昨年3月には自身4度目の日本武道館ワンマンライブを2DAYS完売させ大盛況に収めた。

常に新境地を求め、革新し続ける彼の原動力に迫るスペシャルプログラム『LIVE:live~AK-69 核心と革新~』。第1回のテーマは「LIVE」。AK-69にとってLIVEは生きがいであり、生き様を示す場所である。しかし今年は新型コロナウィルスの影響でライブはすべて中止となり、エンターテイメント業界全体が未曾有の危機に直面している。

そうした中、彼が、こういうときだからこそエンターテイメントの力を感じてほしいということ。エンターテイナーとしての使命、先頭を走っている人間として何ができるかということだった。そこで決断したのが自身初の配信ライブ。選んだ会場はなんと地元・名古屋城。かくして名古屋市の全面協力のもと、日本の城史上初となる前代未聞の“超配信ライブ”「LIVE:live from Nagoya」が開催されることになっていく。

「セットリストや演出に自分たちがワクワクしないと、観てくれている人に絶対伝わらない」と語るAK-69は、現在主流である生配信ではなく、敢えて高いクオリティーが求められる事前収録を選択。これまで音響、照明、演出をすべてセルフプロデュースで行ってきた彼の自信がうかがえる。こだわり抜いた収録配信だからこそできるカット割りやCGエフェクトなどの演出を詰め込み、他とは一線を画した革新的なオンラインライブという名の新たな挑戦だ。

8月28日に配信された「LIVE:live from Nagoya」はヘリコプターに乗ったAK-69の姿から始まり、ヘリポートに着くや「LIVE : live」からスタート。さらにロールスロイスに乗り、名古屋の街を抜けて名古屋城に着くと、ライティングと燃え盛る炎で彩られたステージに登場。最新アルバム『LIVE : live』の楽曲を中心に、同作収録曲に客演した¥ellow Bucks、MC TYSON、SWAY、R-指定、IO、ZORNといった多数のアーティストをゲストに迎えた壮大なライブが繰り広げられ、この先も長く語り継がれる伝説の一夜となった。

今回の番組のインタビューで「敢えて険しい道を通って目標に到達することに男としての格好良さを感じる」と語っていたAK-69。彼は歌詞に「夢」という言葉を使わず、常に「目標」や「挑戦」という地に足のついた表現をすることでも知られている。そして彼は言う。「たとえ燃え尽きようとも火は消えない」と。

コロナ禍で会いたい人に会えず、行きたいところにも行けず誰もが不安やストレスを抱えている昨今。落ち込んだ時、もう限界だと感じた時は、まず彼の「START IT AGAIN」という曲を聴いていただきたい。AK-69本人も奇跡の曲と自賛する歌詞にひとしきりパワーをもらったら、彼の原動力の秘密に迫る『LIVE:live~AK-69 核心と革新~』を観て明日への活力にしよう。

第2回の放送では、独自のファッションブランドを立ち上げ運営する、経営者としての側面にもスポットを当てていく。

(文=秦野邦彦)

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秦野邦彦

1968年生まれ。ライター。『テレビブロス』『フィギュア王』『映画秘宝』『スカパー!TVガイド』、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成を担当した書籍にPerfume 『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

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